来週5月13日にいよいよ開催される、「あだち子どもの未来応援円卓会議」。その中で、基調講演をしていただくA-Step代表の町田彰秀さんの【講演予定の内容】についてUPいたします。

「講演内容を事前に公開いたします。これを読んで興味を持ち、参加頂ければ嬉しいですし、参加が叶わなくても問題を考えて貰える人が少しでもいれば、意義はあると思いました。円卓会議がどのように進行するのか正直、やってみないと判らないですが、私が問うのはレジュメの最後の一文になろうかと思います。当日参加予定のみなさまにも考えておいて頂ければありがたく存じます。」(一般社団法人 あだち子ども支援ネット/A-Step 代表 町田彰秀)

あだち子ども支援ネット キックオフイベント

基調講演「家庭・家族」

みなさんこんにちは、町田でございます。

大山さん、茂呂先生が中心になってあだち子ども支援ネットを立ち上げ、その中で私のような者に皆さんの前で話す機会を頂戴したことに先ず感謝申し上げます。私自身は足立区内で自営を営む傍ら、自らの家族問題もあって任意団体「A-Step」において「家庭の様々な課題解決支援」として、今までも細々と地域活動をしてまいりました。

その一つが「ゆる育カフェ」の定期開催で、これは誰もが気兼ねなく来られる仕組みとして、月に1度、無償で運営しているものです。会の副題に「中途養育者について考える会」としています。実際にはこれが曲者で、誰もが気兼ねなく来る妨げになっていることは重々承知した上で開催している訳です。

「A-Step」という団体名について

ここで、「A-Step」という団体名について、少しだけ補足説明をさせて頂ければ幸いです。

私自身、団体名について敢えて触れないので、「A」は「あだちのA」と思われていると思います。まあ、それはそれでも全然良いのです。実際には「A」とは不定冠詞をイメージしています。「Typical(定型)」に対する「A-Typical(非定型)」の「A」です。また「A」には「個」という意味もあります。

「Step」については、みなさんは「ステップファミリー」という言葉をご存知でしょうか?ここでの「ステップ」にはあまり知られていませんが(継ぐ)という意味があります。使用例としては、Stepmom=「継母」、StepChild=「継子」などになります。一般的にステップファミリーは子連れ再婚により出来上がる家族といっても良いかもしれません。子連れ再婚家庭は結婚相手のどちらかは、養育に中途から関わる「中途養育者」になる訳です。

ここに何か問題があるのでしょうか。

そもそも「問題がある可能性について考えること」はなんとなく、タブーを超えていないでしょうか。実際、子連れ再婚を決意する当事者も、多くは何らかの問題があることについて表面上は認識していないことが多いのです。「なんとかなるはず」と根拠のない自信を示し、後で現実に遭遇し、ショックを受け、再度の離婚に至ったり、最悪の場合、虐待事例となってメディアに公開されてしまったりするのです。まあ、ここにある問題は何で、何が必要なのかについて今回、話しをするつもりはありません。今回のテーマは「家庭・家族」であり、「中途養育に関わる問題」ではないですし、それらについては次の機会がある時に、ゆっくりお話しします。

「多様性」について

「家庭・家族」について話す前に、もう一つ、「多様性」についてお話しさせて頂ければと思います。

「Diversity(多様性)」は、di-《強意》、verse「形, 性質を変える」、-ity《名詞をつくる》となって、形式・種類がさまざまであることを意味します。Verseは(文学形式としての)韻文・詩で、Diverseは(明確に)異なる(詩)、別の(文脈)という意味もあるようです。

多様性と単純にいっても、その分母における多様性の意味は全く異なるものになってきます。例えば「自然科学における多様性」と捉えれば「生物・種・遺伝」などの分類が考えられ、「社会科学・人文学における多様性」と捉えれば、「文化・地域・価値観」と分類出来るでしょう。

実際には多様性(ダイバーシティ)という言葉が日本で流行る背景には「ダイバーシティ・マネジメント」がある訳です。経済論ですね。「人種・国籍・宗教・年齢・性別・障害」等の多様性は、考えようによっては企業の売り上げや発展に貢献し、競争力の源泉となる、という考え方をする訳ですね、これが上手くいくのかどうかとなると、また別のテーマになっていくと思われるので、ここでは深追いをしませんが、今回、ダイバーシティにおいて注目してほしいのは、これら全てが「個性(パーソナリティ)」についてのカテゴライズである、という点です。

多様性を突き詰めていけば一般的な解釈とすれば(みんなちがってみんないい=金子みすずと同様に)一人一人を尊重する考え方に行きつくと考えられている訳ですが、一つにはこれらは区別ないし差別をするためのカテゴライズであること、もう一つには、これらは社会集団と対比される概念であり、所属する団体や地位などに捉われない「個人」という概念であること、さらに「尊重」されるという前提で、「多様性」という言葉は発せられているのです。

「個人」が出て、ここでようやく「家庭と家族」という概念が出てきます。「家庭ないし家族」とは一体なんでしょうか。

「家庭・家族」とは何なのか

通常のニュアンスとして、「家庭」は家であり一般的には「同居」が前提かと思われます。「家族」は続柄として捉えられていると思われます。つまり遠隔地に単身赴任していたり、子どもが学生寮に入ったりして「同居していなくても家族」は成り立つと考えられます。それぞれ共通の部分、共通でない部分がありそうですし、例えばペットは家族なのかとか、シェアハウスは家庭なのか、など細かい議論もあろうかと思います。また、アンジェリーナ・ジョリーはブラッド・ピットとの3人の子だけではなくカンボジア・エチオピア・ベトナムから養子を迎えているとか、杉良太郎が100人以上の里子支援をしているなど、「社会的養護」の視点からの「家庭・家族」論争はあまり知られていないかもしれませんが、以前からあるようです。(東京都が「里親」ではなく「養育家庭」という言い回しに拘るのも、今回詳しく論じませんが、なにか理由がありそうです)

と、「家庭と家族」について、色々な議論が出来そうですが、ただ、今回この場で問題にしたいのは、「家庭も家族も」社会集団の最小単位のひとつではないか、という点です。

さらに付け加えたいのが「通常、公に開かれていない」という点です。もちろん、ビッグダディとか家族ドキュメンタリーは多く存在すると思われますが、それらも前提として「家族には何か秘め事がある」からこそ、番組として成り立っているのかもしれません。

さて、ここからが問題というか、今回皆さんに考えて頂きたいテーマであり、いくつかの問いかけをしますので、皆さんそれぞれ、考えて頂き、その後ディスカッションしていただければ幸いです。

今回皆さんに考えて頂きたいテーマ


私が個人的に参加しています「定形外かぞく交流会」の写真をご覧に入れますが、記念写真なのにも関わらず、殆どの参加者の顔が出ていません。顔出しOKな方はどういう方なのかというと、主催者サイド、あるいは研究者サイドであります。つまり、「当事者ではない方」に限定されています。さて、これは何を意味しているのでしょうか?


次にスライドでは「ジェノグラム」を紹介します。私は時折、ジェノグラムを書くというワークショップを行うことがありますが、時に参加者によっては高い拒否反応を示されることがあります。これは何故でしょうか?


私の卒論の中に「中途養育者の困難について」アンケート調査を実施した部分がありますが、その中で「ステップファミリーの半数以上が『実子ではない』ことを伝えていないことが判りました。何故、自分が養育している子どもが「実子ではない」ことを多くの中途養育者は伝えないのでしょうか。

「家族と支援者」の「立場の違い」

今日、このような円卓会議を設けることが出来たのは奇跡のような出来事ですし、ここへ参加頂ける皆さんは意識の高い、本当に素晴らしい方々と存じます。しかし、いつも何らかの顔合わせ会や懇親会等に参加されている方は、感じていらっしゃる人もいるかもしれませんが「うちは該当しないので」あるいは「よく判らないので」など・・・つまり「話の中に入られない」方々が一定数いらっしゃる事に気づいていると思います。何故、それらの方々は「該当かもしれないけどこう思う」と、自分の意見を言わないのでしょう。

また、支援側の方で、心を開いてくれない困窮者、差し伸べられた手を握ってくれない、すぐにすり抜けていってしまう、このままではいけない、と日々、ジレンマを感じながら任務に就いている人もいるかもしれません。これらは何故起こり、どうすれば「支援者の」ジレンマは解消されるのでしょうか。

以上、全てに答える必要はありません。

余談ですが「答えは風に吹かれている」と歌ったのはノーベル文学賞歌手、ボブ・ディランです。彼が出演している「ビリーザキッド」という映画がありまして、ここではかつての仲間が(無法者のビリー)と(保安官のパット)となり「立場の違い」を「時代の変化」として描いています。無法地帯に法が入る、ということですが、これは「家族と支援者」の「立場の違い」と似通っていませんでしょうか。

最後に。あなたは「家族」でありながら「家族支援」も出来るのでしょうか。

 一般社団法人 あだち子ども支援ネット/A-Step 代表 町田 彰秀

A-Step http://sn3920.wixsite.com/a-step/

「あだち子ども未来応援円卓会議」
5/13(日)午後2時~5時(1時30分受付)
会場:東京未来大学こどもみらい園501教室(足立区綾瀬)
東京メトロ千代田線「綾瀬駅」 徒歩3分
参加費 500円 (学生無料) 定員 50名(申込制)

  ▼お申込みはこちら▼
あだち子ども支援ネット 事務局
domannakanetto@gmail.comまで

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